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2007年<中元>観劇日記
今日は7月21日。「今日から夏休みに突入!」とTVのバラエティ番組はうたうが、芝居人の我々には関係ない。大体'今日から夏休み' の人たちってダレ?とうちの男前俳優牧野くみこならツッコムだろう。いわゆる学生諸氏ですかね、この特権を行使できるのは。しかも高校生以下限定。我々に夏休みが関係があるとすれば、公演日を決める時でしょうか。「この時期だと大学生のお客さんが夏休みに入ってるし」とか、「この時期はもう冬休みに入ってるから、東京にいない」とか。学生さんをターゲットに考えると結構難しいんですね。
さて、6月〜7月初旬は関係者の芝居が多かったとはいえ、シェイクスピアものが4本もあったとは、東京もロンドン並になったものです。
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*「オセロー」 |
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観劇日:2007年6月5日 マチネ ASC新人公演 演出:彩乃木宗之 於:銀座みゆき館 |
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TSCの3月公演に出演した役者が出るとのことで、初めてASCの舞台を観る。「4人の俳優でシェイクスピア」シリーズは魅力的な試みで一度観てみたいと思ったが、この新人公演は新人公演以外の何ものでもなかった。オセロー役は終始無表情で、目をつむっていることが多く、膨大なセリフを発音してはいるが、オセローの心の内で何事が起こっているのか全く理解していない。イアーゴ役もセリフを回してはいるものの、あれだけの行動とセリフを発するだけのエネルギーとなっている感情が何なのか、全く気付いていない。しかも演出の手法が、新人を使ってみせるには難しい手法だったのではないだろうか。
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*「夏の夜の夢」 |
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観劇日:2007年6月7日 マチネ 演出:ジョン・ケアード 於:新国立劇場 |
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これも関係者が出演している舞台ではあったが、当然のことながら、ケアード演出なのでかなり期待して観に行き、肩すかしを喰らった。セットとオーケストラは良かったが、あとは面白くないのである。学園祭などでみかける舞台の方がよっぽど刺戟的でエネルギッシュだとさえ言える。演出はオーソドックス(男性・父親の権力が強い演出は別段新しいとは言えない)なのに、恋する若者たちの喜劇的部分ばかりがたっていて、'哀'の部分が欠落した恋愛物語になっている。パックの存在感も、時には芝居全部をさらってしまうはずの職人たちも存在感が薄く、キャラクターがはっきりしない為、最後の劇中劇が退屈だ。加えて貴族たちや、妖精の王、女王が喋るべき美しい'詩'にのせた感情の吐露がなく、バランスの悪い仕上がりとなった舞台であった。
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*「こころ」 |
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観劇日:2007年6月8日 ソワレ シェイクスピア・シアター公演 脚本・演出:出口典雄 於:俳優座劇場 |
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やはり関係者の出演している舞台だったので、あえて「ヴェローナのニ紳士」ではなく、出口氏の新作「こころ」を観に行った。
俳優座という大きい空間ではなく、もっと狭苦しい小劇場で観ると面白かったかもしれない。演出が一時代前の前衛芝居のような空気をかもし出しているが、空間を埋め切れてないのが残念である。雨の中、傘と傘がぶつかり合う中歩くさまをみせる主人公の心の葛藤のシーンは、若い役者たちに、鍛錬されたアングラ役者たちからもっと学んでほしいと思った。
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*「ヘンリー四世 第一部」 |
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観劇日:2007年6月16日 マチネ 演出:遠藤栄藏 於:板橋演劇センター |
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ヘンリー四世の第一部・第二部の一気上演という試みには拍手を送りたい。羨みの気持ちも添えて。ただ、あまりにセリフのとちりが全体にひどく、結膜炎になってしまったこともあり、第二部も観る予定だったが、第一部だけで失礼した。
衣裳も、せっかく作るのであれば、舞台効果をそこねるものではないものになるよう一考をお勧めする。
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*「国盗人」 |
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観劇日:2007年7月4日 マチネ 作:河合祥一郎 演出・主演:野村萬斎 於:世田谷パブリック・シアター |
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ご覧になった方も多いだろう。さすがに古典のプロがつくった舞台だけあって、美しく、かつ合理的に古典の手法を取り入れていた。悪三郎(リチャード)を王に、とロンドン市民に言わせたいあたりの客席を使っての演出や、最後の決戦を前にしての、亡霊の出る悪三郎にとっては悪夢、りちもん(リッチモンド)にとっては吉夢の処理など、楽しめた。松井るみ氏の舞台も美しく、河合氏の本も、日本語としてレベルの高い、面白い脚本に仕上がっていた。
ただ、「リチャード三世」にはあるリチャードの悩み・苦しみという'負'の部分がなく、痛快な悪党としての面しか表出していないのは残念。白石加代子が女役を全部演じるというのも、演じ分けができていないだけに、原作を知らない人には誰なのか分からず、ねらいも今一つはっきりしない。白石ファンとしては「次はグレイで出なきゃいけないんだよね。大変だ〜」と思いながら応援して観ていた。
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*「にぶんのいち」 |
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観劇日:2007年7月8日 マチネ 劇団宇宙キャンパス公演 作・演出:キムラ シゲオ 於:麻布die pratze |
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係者の芝居である。15年前にやっていればね、という青春真っただ中ものであった。
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*「千里眼の女」 |
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観劇日:2007年7月14日 マチネ 黒門町 公演 作:若菜トシヒロ 演出:狭間鉄 於:武蔵野芸能劇場 |
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関係者が何人も出ている為、必ず観に行く「黒門町」である。おじさま俳優たちが素敵で、若菜氏の本も、毎回何を題材にするのか楽しみである。ただ今回はちょっと芝居のリズムが単調で、長い感じが否めなかった。
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江戸の観劇日記 2007 その1
一体いつから書いてないのだろう。去年の秋からだろうか。年末には全くこのコーナーの存在を忘れていた。3月公演の出演者に、「日記更新して下さいよ」と言われ、自分の芝居で忙しく、それどころではない、と答えたのは覚えている。それから更に3ケ月が過ぎようとしている。
という訳で、去年に遡るのは、観た演目と観劇日を確認しているうちにまた数カ月過ぎてしまうといけないので、'継続は力なり' を座右の銘にしている私としては、手帳を頼りに(チラシはシェイクスピア作品以外3月に処分してしまった!)、観た事が一目瞭然のものを列挙し、去年書きおいたところから現在がつながるよう頑張りたいと思う。明日も芝居を見る予定だし、6月は関係者の芝居も含め観劇予定がつまっている。
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*「終わりよければすべてよし」 |
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観劇日:2006年11月12日(日)マチネ 劇団名: AUN 於:恵比寿エコー劇場 演出:吉田鋼太郎 |
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シェイクスピア作品の中でもあまり上演されない演目である。「尺には尺を」同様'問題劇' というカテゴリーに分類されているが、「尺尺」がここ四半世紀の間注目され、脚光を浴びているのに対し、本作品はなかなか日の目を見ない。タイトルの引用ばかりが有名である。ベッド・トリックが不人気の一つだが、中世的な、道徳劇的古い感じがする芝居である。
演出を手掛けながらも吉田氏は、存在感と、カリスマ性溢れるフランス王を演じていた。この作品で一番興味深い役どころである道化ペーローレスには劇団員ではなく、文学座の横田栄司を起用していた。横田は魅力ある役者だが、このペーローレスはもう少し毒があった方が面白い。
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*「タンゴ・冬の終わりに」 |
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観劇日:2006年11月15日(水)マチネ 於:BUNKAMURA 演出:蜷川幸雄 |
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立ち見で観たが、冒頭とエンディング場面での群衆シーンのスローモーションがあまりに長く閉口した。しかも音楽はいつも聞く曲である。他の曲はないのか。
初演も観たが、今回の堤真一は透明感があってよかった。しかし、別れた若い恋人役、女優という設定だが、初演時は名取裕子。今回は常磐貴子。いずれも悪声で聞きづらい。
音楽が全体に入り過ぎていてうるさかった。
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*「ROPE」 |
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観劇日:2006年12月20日(水)マチネ 於:BUNKAMURA 劇団名: NODA MAP |
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年末最後の芝居はNODA MAP、というのが最近の恒例となっている。(実際には次の日に関係者の芝居を昼、夜と観に行ったが) 今回は脚本が意外に直球なので驚いた。もっと長くくねってほしい。それが野田秀樹の脚本の魅力ではないだろうか。
渡辺えり子と野田の夫婦がよかった。
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2007年1月-3月公演の稽古が始まり、加えて横浜での本番もあったのでさすがに何も観ていない。と思ったら、「コリオレーナス」を観に行っていた |
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*「コリオレーナス」 |
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観劇日:2007年1月23日(火)ソワレ 於:彩の国さいたま芸術劇場 演出:蜷川幸雄 |
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稽古終了後与野まで行く。上演時間の掲示を見て、終演後家迄辿りつけるだろうかと心配になる。
言わずとしれた蜷川ワールドが展開していた。ものすごい急かつ数のある階段を駆け下りたり上ったり、なぎなたを振り回したり、役者さん達ご苦労様でした。コリオレイナス役の唐沢寿明が一人で敵陣に切り込んで行き、戻ってくると矢が数本肩のあたりにささっているのを見て、矢ガモを思い出してしまった。出演者は声が割れていて、(さすがの吉田鋼太郎も)何を言っているのか分からなかった。白石加代子の存在感は他を圧倒していた。唐沢寿明は嫌いな役者ではないが、コリオレイナス向きではないと思う。
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<2月>横浜での本番2本抱えての本公演の稽古。この月こそ、何も観なかった。 |
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<3月>この月はバイトと、腰を痛めて針通い。下旬にボルネオ旅行。1本だけだがいい芝居を観た。 |
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*「リターン」 |
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観劇日:2007年3月22日(火)ソワレ 於:SPACE早稲田 劇団名:流山児★事務所 作:レグ・フリップ(豪州) 演出:流山児祥 |
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最終電車の1車両という、狭い空間で数人だけの役者によるミステリーである。アングラは好きではなかったが(この作品はアングラではないが)、最近のTVドラマのような舞台に比べると、凝縮された空間と訓練された役者陣が実に小気味いい。
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<4月>初旬は花見に明け暮れ、中旬は朗読会の台本づくり、稽古、本番 |
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*「授業」 |
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観劇日:2007年4月23日(月)16:30〜 於:下北沢OFFOFFシアター 作:イヨネスコ 監修:柄本明 |
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密度の濃い作品であるので、ハプニングがあっても素になって笑うことは避けてほしい。
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*「花咲く家の物語」 |
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観劇日:2007年4月26日(木)マチネ 於:シアターχ マルセ太郎メモリアルシリーズ 演出:永井寛孝 |
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<5月>体調をくずし、予約しながらも行けなかった芝居が何本もあった。 下旬になって観劇再開 |
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*「薮原検校」 |
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観劇日:2007年5月24日(木)マチネ 於:BUNKAMURA 作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:宇崎竜童 |
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またも長い芝居を立ち見で観る。しかしBUNKAMURAはさぞかし儲かっていることだろう。作品柄故か、結構年配の方の立ち見も多かった。女性トイレは悲惨だった。
古田新太の悪党ぶりを観に行ったが、全体に芝居というよりは語り部物語と歌、というつくりになっていて、物足りない感じがした。
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*「犬は鎖につなぐべからず」 |
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観劇日:2007年5月31日(木)マチネ 於:青山円形劇場 劇団名:ナイロン100℃ 原作:岸田國士 潤色・構成・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ |
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岸田國士の一幕ものをつなげたものだが、あらゆる意味で'うまい'舞台だった。ケラ氏のマニエリスティックな演出が岸田戯曲を際立たせていた。舞台の'魅せる'転換、和装衣装、舞台美術も粋だった。客演していた役者の中では特に「屋上庭園」の植本潤と大河内浩に泣かされた。植本氏の女形は好きだが、くたびれた鼠色のスーツを着て、卑下しきった男の姿を見ていると、岸田戯曲は決して古くないと痛感させられる。
しかし、円形で¥6、000はちょっと高いのではないだろうか。
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2006年の夏が終わろうとしている。残暑はまだ続きそうだが、TSCにとっての長い'夏'は終わった。
観劇日記もしばらく怠っていたので間が空いてしまったが、思い起こして書こうとするのは得策ではないと思うので、この夏の終わりの観劇から続けよう。
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*「詩人の恋」 |
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観劇日:8月29日(火)19時〜 作:ジョン・マランス 訳:小田島恒志 演出:久世龍之介 製作:加藤健一事務所 出演:加藤健一 畠中 洋 |
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加藤健一の芝居はこれまでに何本も観てきた。その度に彼のセリフ術、笑いのセンスには感心させられてきた。これほど翻訳劇の似合う役者は他にいないのではないだろうかとさえ思っていた。だが今回の舞台には'感動'した。落ち目の老声楽家マシュカンが、劇中何度も口にする「喜びと悲しみが同時にある」人物を見事に実在させていた。役作りの上で欠かせない声楽やピアノの特訓など(初演以来3年間続けていたそうだ)、並々ならぬエネルギーと時間をかけての取り組みが、マシュカンの耐えてきた歳月の表現に大きく貢献していた。そして何よりも、ハインリヒ・ハイネの詩16遍をつけたシューマンの「詩人の恋」の最後の歌を歌い終わったときー沢山の苦しみをつめた棺を川に捨てるーその時のマシュカンの目を、私は忘れないだろう。
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みなさま 明けましておめでとうございます 今年も昨年にひき続き よろしくおひきたての程 お願い申し上げます |
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さて昨年の9月の15周年記念公演以来、観劇日記を記すのをさぼっておりまして、2、3回書かずにおりますとあっと言う間に年が変わり、早くも1月も20日を過ぎてしまいました。
昨日吉祥寺シアターで山の手事情社の「タイタス・アンドロニカス」を見ながら、「ああ観劇日記を再開しなくては。。。」と思っていたのでした。ですがそう若くもないので、無理な勢いで穴埋めをするのはやめにしたいと思います。現在次回の朗読会の為に「リア王」の翻訳もしていますし、風邪が流行っている昨今でもありますので(と腰がひけていて申し訳ないのですが)昨年末までに見た芝居のライナップをとりあえず行い、2005年と2006年の架け橋としたいと思います。橋をつくっておけば、往ったり来たりが今後自由にできるというものです。観劇日時も手帳をひっくり返していますとまた掲載が遅れますので、大体頭が覚えている順番で御容赦下さい。
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*シアターX「泥棒論語」 |
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うちの公演の次の週だったが、お世話になっている花柳輔礼乃師匠の振り付け故馳せ参じた次第。昔よく鳥獣戯画を観に行ったので、知念さんが懐しく、まあ楽しめた。
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*だるま座「星屑の町 パート1」 |
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TSCにもよく出演するヲトメ嬢が出演していたので観に行った。作品自体は初演の時に観ていたので、おじさん度を比べながら観ていた。う〜ん役柄によって様々であった。
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*俳優座「湖の秋」 |
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何で観に行ったのか思い出せないが、おそらくマチネ公演があり、芝居を何か観たかったのであろう。 |
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*2NKプロジェクト「じゃじゃ馬馴らしが馴らされて」 |
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本邦初演。シアターXさんのご好意により観劇。原作と同じように訳している、と噂には聞いていたが、役者たちがすごい勢いで喋り(その技術はすごいが)、セリフが日本語になっていないので非常に疲れた。 |
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*パルコ・リコモーション「ダブリンの鐘つきカビ人間」 |
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タイトルにダブリンとあったので観に行ってしまった。お金と時間を無駄にしてしまった。 |
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*風琴工房「ゼロの棺」 |
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メインで活躍している松岡洋子ちゃんが以前うちの「ヴェニス。。。」に出た事もあり、風琴工房は時々観に行っている。今回の舞台美術は突貫屋の杉山至。以前青年団に客演した時に共演したことがある。無機的でうつくしい舞台だった。 |
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*シアターX・多和田葉子「脳楽と狂弦」 |
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作家の朗読のプロデュースをしていることもあり、シアターXさんのご好意により観に?聞きに行った。 |
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*パルコ「メアリーステュアート」 |
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原田美枝子の芝居がいいのでびっくり。女王然としていて良かった。ただ二人とも(南果歩との二人芝居)声が割れぎみで残念。 |
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*ラティガンまつり(自転車キンクリート)「ブラウニング・バージョン」 |
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俳優座の「セパレート・テーブル」を観て以来ラティガンファンになっていたので観に行ったが、本だけでなく役者も(内田春菊にはちょっと役が重荷だったようだが)なかなかよかった。さすがラティガン。演出も良かった。 |
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*青年団「砂と兵隊」 |
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平田オリザの新作ということで久々にアゴラに観に行った。普通の不条理劇になっている、と新聞に評が載っていたが、同感。オリザの作にしては。。。というかんじである。設定が重すぎて役者たちには背負いきれていない感が強かった。 |
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*「リタの教育」 |
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今すぐプログラムがみつからないのだが、「ピグマリオン」の現代版のようなストーリである。ただし二人芝居で二時間半、さわやかな終わり方はするがハッピーエンドでは決してなく、濃厚な人間のドラマがある。イギリスの作家は人間を描くのがうまい。役者たちも再演を重ねているそうだが、たいした集中力である。しかしOFF・OFFシアターはビルが改装したらトイレがなくなってしまったとは。。。 |
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*RSC 「夏の夜の夢」 |
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観た方も多いだろう。光と影が美しく、視覚的にかなり凝った演出がなされていた。RSCの「夏の夜。。。」もこれで何本観たのだろう。初心に立ち返ったお金をかけない舞台も観てみたいものだ。 |
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